#39 親から借りたお金が贈与に?
家を購入する費用や子供の教育費用など、さまざまな事情から両親に借金をすることがあります。この借金が贈与とみなされれば贈与税が課税されてしまいます。仮に2000万円の贈与だとみなされると600万円近くの贈与税がかかることもあります。
親子間の財産移転が贈与とみなされやすいポイントなどを解説します。
親子間の財産移転は贈与とみなされやすい?
住宅ローンを金融機関で組むと、返済期間や金利面での融通がききにくいことから、「(子供に)金融機関から借金をさせるくらいなら自分が貸そう」と考える親御さんも少なくないでしょう。
しかし、親子間の借金は融通がききやすい反面、返済が滞ったり、お金がある時だけ返済したりというこ
とになりやすいものです。客観的に返済の事実が見えないと、借金ではなく贈与と判断されてしまう危険性は否定できません。
贈与とみなされないための4つのポイント
思わぬところで贈与税を課税されることのないよう、親子間の金銭貸借関係は客観的にわかるようにしておくべきでしょう。ポイントを4つ解説します。
①借用書を作成する
通常、金銭の貸付は一定の期間内に返済があることを前提に行われます。そのため贈与税はかかりません。
しかし、親子間のお金の貸し借りになると、返済や利息の契約があいまいになってしまいがちです。
当事者は貸付・借入のつもりであっても、返済期日を定めていなければ、税制上は贈与とみなされてしまいます。
そのため、贈与ではなく金銭の貸付であることを明示するために契約書を作成しましょう。
第三者との間で金銭消費貸借契約を結ぶときと同じレベル感で、貸付金額や金利、返済方法を設定します。
よくない例:親が子にお金を貸したが、返済方法を口頭で約束した。
②適切な金利を設定する
親子間のやり取りだからといって無金利にしてしまうと、金利相当分が贈与とみなされる可能性があります。
適切な利息の設定を行い、きちんと利息の支払いを行いましょう。
よくない例:金銭消費賃借契約で3%の金利を設定したが、実際は元金のみ返済した。
③現実的に返済可能な額と期間を設定する
お金を貸す際は、親が存命のうちに返済が終わるように返済計画を設定しましょう。
高齢の親に対して20年~30年にわたってお金を貸す計画になっていると、本当に返済をさせるつもりがあるかどうかを疑われる可能性があります。
よくない例:80歳の親が30年にわたる返済計画で子供にお金を貸した。
④返済・利払いは現金受渡ではなく銀行振込にする
返済と利子のやり取りは、返済の事実を後日客観的に確認できるよう、銀行口座を通して行うようにしましょう。
親が亡くなった場合はどうなる?
もし債権者である親が死亡した場合、親が子から貸付金を返してもらう権利(債権)が相続財産に含まれることになります。
そして子が親の相続人となることで債権者(生前の親の立場)と債務者(子の立場)が同一となった場合、民法上は債権・債務が消滅します。
相続人が債務者の子一人だと問題はありませんが、借主以外の相続人が他にもいる場合、問題が起こる可能性があります。
債権が他の相続人に相続されると、他の相続人に対して債務者(子)からの返済義務が生じるだけでなく、他の相続人は債権そのものに相続税が課税される分、相続税を余計に払わなければならなくなるからです。
そのような相続時のトラブルを避ける方法として、債権者である親が遺言書を作成することが考えられます。作成時は下記のようなことを考慮しましょう。
①債務免除を記載し、債権を消滅させておく
遺言書に、亡くなった場合には債務を免除する旨を記載し、債権自体を消滅させましょう。
債務免除されても相続税がなくなるわけではありません。
②借金していた子供が債権を相続するような形で遺産を分割する
親子間の財産移転が贈与か相続かによって、予想される展開は異なります。思わぬ税金を課されないよう注意しましょう。
【対処法】遺言書がなく、相続財産に債権が含まれており、相続人が複数いる場合
既に上記の状態にある方は、相続人間の争いを起こさないためにも、速やかに相続の専門家に相談することをおすすめします。
第三者が間に入ることでスムーズな相続手続きが可能になることがあります。
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この記事を担当した税理士
いわみ会計事務所
代表
岩見 文吾
- 保有資格
公認会計士・税理士・行政書士・FP
- 専門分野
-
相続・会計
- 経歴
-
いわみ会計事務所の代表を勤める。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。
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