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なぜ二次相続は重要?税額シミュレーションで解説

相続税は遺産の分配方法によって大きく変わるため、事前にシミュレーションを行うことが重要です。

ここでは、一次相続と二次相続における遺産配分の違いがどのように相続税に影響するか、具体的な例を用いて解説します。

家族構成や遺産総額を設定し、それぞれの配分割合による相続税の合計額を比較することで、節税効果を実感できます。

適切な遺産分割を考えることで、相続税負担を軽減し、家族間のトラブルを防ぐための参考にしてください。

一次・二次相続の遺産分割シミュレーション

相続税の変動を具体的にシミュレーションすることで、違いを実感できます。

以下の条件で遺産配分割合による合計納税額の違いを解説します。

【家族構成】 父、母、子ども2人の4人家族
【遺産総額】 2億5000万円

※二次相続時に子が受け継ぐ財産は「一次相続時に配偶者が相続した財産額」と仮定します

配偶者の遺産割合を70%とした場合

まず一次相続では、遺産総額の70%である1億7500万円を配偶者へ、残り7500万円を子ども2人へ3750万円ずつ分配したとします。

その後、二次相続における子どもの遺産総額が1億7500万円(1人当たり8750万円ずつ)だとすると、細かい計算は省略しますが、このときの一次相続と二次相続の相続税額の合計は約【3,150万円】になります。

配偶者の遺産割合を60%とした場合

一方、一次相続で遺産総額の60%である1億5000万円を配偶者へ、残り1億円を5000万円ずつ子どもへ配分し、二次相続での子どもの相続分が5000万円ずつだとします。

すると、相続税額の合計は約【2,700万円】になります。

この例では、合計で約450万円の節税効果があります。

このように、一次相続の時点で配偶者と子どもへの遺産の配分を工夫することで、二次相続を含めた合計税額を抑えることができます。

二次相続対策としての6つの方法

1. 生前贈与を行う

二次相続の負担を軽減するために、生前贈与を活用する方法があります。

生前贈与は、相続前に財産を先に渡すことで相続税を抑える手法です。

年間110万円までの贈与は非課税なので、この枠を毎年利用して少しずつ財産を贈与することで、段階的に相続を進められます。

注意点として、生前贈与が相続税の対象外となるのは亡くなる7年以上前の財産です。

2022年12月の税制改正により、この加算期間が「死亡前3年」から「死亡前7年」に延長され、2024年1月1日以降に適用されます。

生前贈与のメリット

 ・希望通りの相続: 生前に贈与することで、相続争いを防ぐことができる

 ・認知症リスクの回避: 認知症になる前に相続を完了することができる

 ・早期の財産割り振り: 必要な家族に早期に財産を分け、有効活用することができる

生前贈与を検討する際は、専門の税理士に相談し、適切な方法で進めましょう。

2. 配偶者の資産を増やさない

二次相続の税負担を抑えるためには、一次相続で配偶者の資産を増やさないことが重要です。

配偶者への相続を最小限に抑え、基礎控除内に収まるようにするのが理想です。

価値が上がる不動産や株式は子どもに相続させ、低評価のうちに相続を完了させます。

ただし、配偶者の生活が安定する資産は確保する必要があります。

バランスを考えた相続計画を立てることで、税負担を軽減しつつ家族全体の利益を守ることができます。

3. 生命保険を活用する

生命保険は手軽に実行できる二次相続対策の一つです。

生命保険の受取金には法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があり、これを利用することで相続税を軽減できます。

また、預貯金と違い凍結されずに受け取れるため、納税資金としても役立ちます。

終身保険は高齢や持病があっても加入しやすく、長期間の保障が得られます。

受取人は子供に設定し、配偶者を避けることで二次相続の相続税を回避できます。

4. 子どもに実家を相続させる

一次相続の際に実家を子どもに相続させることは、二次相続の税負担を軽減する効果的な方法です。

実家を子どもに相続させることで、小規模宅地の特例を適用し、330㎡までの宅地評価額を80%減額できます。

一方、配偶者控除は実家以外の財産に適用し、実家には小規模宅地の特例を利用するのが効果的です。

さらに、一次相続で配偶者が実家を相続すると、二次相続時に再び相続税がかかります。

二次相続で特例を利用するためには、子どもが同居していることが条件となるため、同居や二世帯住宅の検討が重要です。

2020年4月からの「配偶者居住権」を利用し、配偶者が居住権を持ち、実家の所有権を子どもに相続させることも可能です。

このように、一次相続時に将来価値が上がる財産を子どもに相続させ、評価額が低いうちに相続を完了することで、相続税を抑えることができます。※配偶者居住権と似たものに、配偶者短期居住権があるので違いに注意しましょう。

5. 相続をする場合の財産の種類を変更する

一次相続で配偶者に高資産性の財産を相続させないことが、二次相続での相続税を抑える鍵です。

例えば、賃貸住宅など家賃収入を得られる財産を配偶者に相続させると、その収入が積み重なり二次相続時に大きな資産となります。これにより相続税が増加します。

節税の観点からは、家賃収入や配当収入を生む財産は一次相続で子どもに相続させる方が有利です。

これにより、配偶者の資産増加を防ぎ、相続税負担を軽減できます。

財産の種類と将来価値を考慮した相続計画が重要です。

6. 相次相続控除による優待規定を利用する

10年以内に一次相続と二次相続が発生する場合、相次相続控除を利用できる可能性があります。

この控除により、一次相続で配偶者が支払った相続税の一部が二次相続時の相続税から控除されます。

二次相続では配偶者控除が使えず、相続税が高額になるため、相次相続控除の申告を忘れずに行うことが重要です。

早期に対策を知り、計画的に進めることで節税につながります。最適な対策を理解し、早めに実行することが大切です。

この記事を書いた人

いわみ会計事務所

代表

岩見 文吾

保有資格
税理士・公認会計士・行政書士・ファイナンシャルプランナー(CFP)
専門分野
相続・会計
経歴
いわみ会計事務所の代表を勤める。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。