TOP #116 遺言書を保管してもらえる制度

#116 遺言書を保管してもらえる制度

生前に遺言書を作成しておくと、相続人が相続財産を把握する際の助けになったり、遺したい方に遺したい遺産をしっかりと継がせていけたり、遺産分割協議を行わずに相続手続を進められたりと、さまざまなメリットがあります

今回は、そのような遺言書について、その保管方法とその種類に注目して簡単にご紹介したいと思います

■遺言書を法務局に保管できる「自筆証書遺言書保管制度」

本人が遺言書の全文・日付・氏名を自署し、印を押したものを自筆証書遺言といいます

コスト負担も軽く、また気軽に作成に着手できることから、自筆証書遺言を作成される方も少なくありません

作成者の自宅などで保管されることが多い自筆証書遺言ですが、遺言書の紛失や改ざんなどをめぐって、遺言者の相続後にトラブルが起きる事案も少なからず発生しています

そのため、せっかく作成した遺言書を保管している際に生じうるトラブルや危険に対する対策として、近年の法改正で新設された「自筆証書遺言書保管制度」を利用する方も増えてきました

 

この制度は、自筆証書遺言を法務局の遺言書保管所に預けるものです

申請費用は1件当たり3900円で、預けた遺言書は、全国のどの遺言書保管所でも閲覧できます

モニターで閲覧する場合は、1回につき1400円の手数料がかかります

 

また、保管所に保管されている遺言書は、遺言書の保管の申請の撤回をすれば、いつでもその返還を受けることができます。撤回書を作成し、撤回の予約をして原本が保管されている保管所に行き必要な手続をすると、遺言書の保管の申請を撤回することができます

この手続きに手数料はかかりません

なお、この遺言書の保管の申請を撤回することは、遺言書自体の効力とも関係がありません

 

■「公正証書遺言」

自筆証書遺言制度とあわせてよく利用される遺言の制度として、「公正証書遺言」というものがあります

これは、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で述べ、それが真意であることを公証人が確認したうえで公正証書として文書にし、証人と遺言者に確認をして作成します

手数料は1万6000円からで、財産額に応じて費用が変わります

 

公正証書遺言の原本は必ず公証役場で保管されます。そのため、破棄や改ざん、紛失などの遺言書の保管中に起きうるトラブルは起きません

 

このほか、遺言書の内容を秘密にしておきたいときには「秘密証書遺言」が利用できます。内容を秘密にしたまま、遺言があるということだけを証明するもので、遺言者が作成した遺言書を封入し、公証役場で公証人と証人2名の前に提出、内容を秘密にしたまま自分の遺言書である旨と、氏名・住所を申述します。

 

なお、遺言書の内容を変更したい場合は、遺言作成後に、変更後の内容の遺言書を作成すれば、以前に作成している遺言書と内容が抵触する範囲において、後から作成した遺言書が効力を生じることになります

なお、変更の場合の遺言の方式は、必ずしも遺言を作成した方式によらなければならないものではありません。つまり、公正証書遺言を自筆証書遺言で変更することもできますし、その逆も可能です

 

遺言書を自宅に置いておくと、家族がうっかり捨ててしまったり、場所を忘れてしまったり、利害関係者が破棄・改ざんしたりと、トラブルが起きることが想定されます

せっかく作成した遺言書ですから、法的に有効な遺言書を作成することは当然ですが、作成するだけなく、sの後の保管方法についても適切に選ぶことも大切です

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この記事を書いた人

いわみ会計事務所

代表

岩見 文吾

保有資格
税理士・公認会計士・行政書士・ファイナンシャルプランナー(CFP)
専門分野
相続・会計
経歴
いわみ会計事務所の代表を勤める。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。