#124 相続対策と認知症
相続対策で注意すべきことの1つに「認知症リスク」があります。認知症になり判断能力が十分でなくなると、予定していた相続対策ができなくなったり、時期や内容に変更が必要となるなど様々な影響がでます
そこで今回は、認知症と相続対策について簡単にご説明したいと思います
内閣府が公表した『平成29年版高齢社会白書』によると、2025年には日本の認知症高齢者は700万人を超え、65歳以上の高齢者のおよそ5人に1人が認知症になる可能性があると予測されています。認知症は今や私たちにとって身近な症状となっています
認知症は多くが判断能力が徐々に低下していきます。もし認知症になり、法律上意思能力がない状態となると、有効な法律行為を行うことができなくなります
たとえば不動産の売買や生命保険の契約、子や孫への生前贈与、遺言の作成など、意思能力が必要とされる法律行為はすべて無効となります
意思能力があるかどうかは、医師の診断や介護記録、家族の証言などをもとに判断されます。遺言に関しては内容にもよります。認知症でも、軽度なら意思能力があると判断されることもありますが、いずれにしても個別の判断となります
認知症を発症すると、症状が進行するにしたがって行えることが限られてきます。たとえば自分の財産の遺し方について希望や考えがあるのであれば、意思能力が十分なうちに遺言を作成することが必要です
このとき、遺言を作成した時点で意思能力があったことを証明するものを残しておくことも大切でしょう。認知症は発症後、本人も気が付かないうちにゆっくりと進行していくケースがほとんどですから、遺言作成時にはごく軽度で意思能力が十分にあったとしても、徐々に症状が重くなり、意思能力がない状態になっていくかもしれません。そうなると後になって、いつまで意思能力がある状態だったのか、まわりの家族も断定できないということが起こり得ます。本人の死後に、たとえば遺言に納得のいかない相続人が、「遺言作成時に意思能力がなかったのでは?」などと主張し、それが認められると、せっかく作成した遺言が無効になってしまいます
そのようなトラブルを回避するためには、遺言を作成すると同時に、病院で認知症検査を受けて結果を保存しておく、自身の普段の様子を日付がわかる形で映像に残しておくなどの対策をとっておくことです。意思能力があることを客観的に証明できるものを残しましょう
公正証書遺言の場合は、公証人が意思能力の有無を確認するため、遺言が有効だと判断されやすいですが、それでも証拠があるほうが安心です。
認知症を他人事と捉えず、もしものときに備えて早めの相続対策を心がけましょう
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