#132 生前贈与のつもりが名義財産に?
被相続人が生前に、相続人や親族など自分以外の他人名義の口座に預金をしたりする話をよく耳にします。しかしいわゆる「名義預金」や「名義株」は相続財産と見なされると相続税が課税されるため、注意が必要です
■相続税が課税される財産の範囲は、「名義」をもって判断するわけではない
相続における「名義財産」とは、形式的には他人名義ですが実質的には被相続人本人の財産であるものをいいます
たとえば預貯金を多額に保有している方がそのまま亡くなると、相続財産として多額の相続税がかかることが懸念されます。そこでよく行われる相続対策として『暦年贈与』で生前贈与をする(=相続財産を減らす)方法があります
贈与は、契約書の作成がなくても成立しますが、後日の相続人間や課税当局との紛争・見解の相違を避けるためには、たとえば贈与契約書を作成するなど生前贈与が当事者間で適切に行われたものであることを、後日客観的に検証・確認が可能な形として残しておくことをおすすめいたします。たとえ親が子・孫の名義で作った預金口座にお金を移していたとしても、贈与でなかったとすると税務上は名義預金として相続税の課税財産と見なされる可能性があるでしょう
名義財産は、預貯金に限られません。たとえば名義株(株主名簿に記載されている株主ではない人が、実質的な株主となって株を所有していること)などもあります
たとえば、会社の株主名簿上は、社長から生前に社長の息子名義に変更された記載がされているとしても、実際は息子には株の贈与を受けた認識がないようなケースです。この場合、社長である父親が亡くなったとき、株式の名義が息子だとしても、その株式は相続財産として計上しなければならないでしょう
■名義財産と判断されないためのポイント
意図的に名義財産の状態にしてしまうケースもあれば、本人は相続税対策のつもりだったものの結果として名義財産の状態になってしまっていたということもあるでしょう
名義財産と判断される場合、遺産分割協議の対象になる・ならないの点で相続人間で紛争に発展する可能性もありますし、相続税の課税対象になる・ならないの点で課税当局と争いになる可能性もあります。特に税務調査において名義財産の計上漏れが指摘されると、相続税の課税対象になるだけでなく追徴課税などのペナルティの対象にもなってしまいます
生前贈与がなされているのであれば、その証拠を後日の税務調査の際に提出できるよう、事前に準備しておくことが肝要でしょう。名義預金や名義株ではないという証拠を残すためにも贈与契約書を都度作成する、通帳には記帳を行う、株を譲渡したときには株主名簿を更新するなど、書面として証拠を残しておくことが大切です
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