#51 財産を特定の人に託したいときに役立つ『民事信託』

先祖代々受け継いできた土地や建物は、自分の親族に引き継いでほしいと考える人も多いものです。しかし、相続が発生する順番などの状況によっては配偶者側の親族に渡ることもあります。

そこで、自分が指定した人に財産を遺したいときなどに相続と共に活用したいのが『民事信託』です

 

□  財産を守るのに活用したい民事信託

先祖代々受け継いできた土地や建物を、自分の死後は配偶者が住む場所に困ることがないように自配偶者に遺してあげたい、でも夫婦間に子どもがいない状態などで相続が発生する順番によっては配偶者が土地・建物を相続したのち、その配偶者が死亡すると配偶者側の親族が相続人となる場合があります

 

すると、先祖代々の土地が自分の家系を離れ、配偶者の親族のものになってしまいます。たとえ配偶者との間に子どもがいたとしても、その子どもの代で同じことが起きてしまう可能性があります

 

ここで役に立つのが財産を特定の人に託す制度『民事信託』です

『民事信託』では、財産の管理を託す人を「委託者」、財産の管理を託される人を「受託者」、財産から生じる利益を得る人を「受益者」といいます

たとえば「自分に何かあったときには妻が自宅に住み続けられるようにしたい。ただ自宅の管理は弟に任せたい」というときには、委託者は夫、受託者は弟、(第一)受益者は妻とします

さらに、受益者は弟から先に連続して指定ができます。そのため、たとえば「妻が亡くなったら
自宅は弟に譲りたい」として第二次受益者に弟を指名することも可能です

 

なお、受託者と受益者の兼任の問題や、不動産取得税がかかる形、かからない形など、相続税の対象となる場合、民事信託の組み方は複雑ですので、専門家への事前の相談が必要となります

 

近年、民事信託を活用するケースとして、アパートなどの収益物件の財産管理の手法として増えています

「今は大丈夫だけど、将来自分が認知症になった場合に、・アパートの大規模修繕、・入居者との賃貸借契約、・施設の入居金に充てる等のための売却、などの契約行為ができなくなるのは困る。その際は長男にアパートの財産管理を任せたい」

そのようなニーズにフィットする手法が民事信託です

 

委託者兼受益者を父、委託者を長男としておけば、アパートオーナーの認知症リスクに対しても対応することができます

発展形として、先の例と組み合わせて、本人が亡くなった後の二次受益者を妻とする信託を組成しておけば、自分の死後は家賃収入を妻の生活資金として確保してあげたい、

そのようなニーズも民事信託を活用すれば実現することができるでしょう

 

□ 『民事信託』と遺言書は併用しよう

では、民事信託さえしていれば遺言書は必要ないかというと、そんなことはありません

民事信託では今ある財産について、誰に託すか、利益は誰が得るかなどを決めることができますが、信託契約を交わした後に生じた財産など、信託契約にない財産については対象外となります

一方、遺言書では自分が亡くなるときに存在するすべての財産について行き先を決めることができます

 

信託契約していない財産は遺言書で誰が相続するかを決めるなど、信託と遺言書との併用も考えましょう

 

ただし、「民事信託はよくわからない」、というお声をよく聞きます

売買や贈与などと異なり、信託は登場人物の立場が「3つ」でてくるのでイメージが付きにくい、ということが大きな理由の一つだと思います

 

工夫次第で便利に使える民事信託。財産管理手法として近年とても注目されています。ぜひ活用していただきたい制度です

この記事を担当した税理士

いわみ会計事務所

代表

岩見 文吾

保有資格

公認会計士・税理士・行政書士・FP

専門分野

相続・会計

経歴

いわみ会計事務所の代表を勤める。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。


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