#81 意外に多い「使途不明金」

使途不明金には明確な定義がありませんが、ここでは被相続人名義の口座から引き出され預貯金のうち、引出者や使途などに不明な点のある預貯金のことをいうこととします

相続開始後に通帳を確認したら生前に誰かが預金を引き出していたり、被相続人本人の多額の引出があるもののその後の使途や保管が不明、といったケースは珍しくありません

この使途不明金について、どのような問題が起こりうるのかを簡単に検討してみます

 

■遺産分割時に返還請求や損害賠償請求の対象になりうる

被相続人以外の親族が勝手に引き出したものである場合、

法律上の原因がないまま当該引出者が利得を得ている状況のため、不当利得返還請求権として遺産相続の対象となり、相続人は当該引出者に対してその返還を請求することができます

その勝手な引出行為の結果、被相続人の財産に損害が発生している場合には、相続人はその損害の賠償を請求することができます

 

ただ、第三者が預金を勝手に下ろしたということを立証するのはなかなか困難なので、弁護士などの専門家に依頼するほうが得策といえるでしょう

 

■税務調査の対象になりうる

使途不明金は、相続税課税を不当に回避する目的でなされることも想定されるため、税務調査において引出者の確認や使途の確認がなされることもあります

もちろん、引出による使途不明金があることだけでの課税はなされませんが、

その引出金の全部または一部が相続人や親族の口座に預け入れがなされていたりすれば

預託金や不当利得返還請求権として相続税が課税されたり、贈与・みなし贈与として贈与税が課税されることもあります

 

 

相続前の引出金の性質については、不当利得返還請求権、贈与、みなし贈与、消費寄託、など様々な見解がありますが

当該引き出しが被相続人本人による贈与や寄託などの契約行為に基づくものであることが立証可能性を考慮しても明らかである場合(この場合はそもそも今回のテーマである使途不明金にはあたりませんが)を除いて、

使途不明金は遺産分割の点でも相続税申告の点でも様々な問題を招くことがあります

 

相続人が被相続人に頼まれて預貯金を引き出し被相続人のために使った、という証拠があればよいですが

その事実を立証できなかったり、話し合いで解決しなかったりした場合は調停や訴訟をすることになり、コストや時間がかかるので注意しましょう

 

使途不明金については、トラブルを回避するため、できるだけそのような引出が発生しないよう信頼のできる人に預金の管理を任せたり、引出や使途について関係者の間で情報を共有しておくなどの工夫が必要でしょう

この記事を担当した税理士

いわみ会計事務所

代表

岩見 文吾

保有資格

公認会計士・税理士・行政書士・FP

専門分野

相続・会計

経歴

いわみ会計事務所の代表を勤める。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。


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